消費者契約法

消費者契約法とは

消費者契約法とは、事業者と消費者との間の契約に関する規則のことです。

これは平成13年4月1日に施行された比較的新しい法律です。

また2019年6月15日からその一部が改正施行されています。

この法律は民事ルールの取り決めに過ぎないので、事業者側がこのルールを破ったとしても行政的規制を受けたり、刑事罰を受けることはありません。

しかし、通常、事業者側は様々な情報に詳しく、また契約の交渉を行う上では一般の消費者よりも技術が長けていると考えられることから、両者が対等に消費契約を締結できるようにする必要があるわけです。

そこで、このルールを侵した業者に業務停止や罰金などの刑罰が無くても、消費者側から一定の制約の基づいて、法的に取消しや無効を主張できるようになっているのです。

特定商取引法に当てはまらない事案であっても、この法律から悪質業者に立ち向かうことが可能になるのです。

適用範囲

許認可を受けて営業を行っている事業者は、その監督をしている行政官庁により許認可を取消され営業停止等の処分を受けます。また特定商取引法では指定された商品や特定の権利や役務の範囲でしか行政的、刑事的な制裁を受けません。

しかし、消費者契約法はそこに含みきれない、全ての消費者契約に適用されます。病院や飲食店も例外ではありません。

消費者契約とは事業者と消費者との間の契約に規定されますが、事業者間であってもその商品等の性質によっては適用を受けます。例えばテレビをある個人事務所が家電販売業者から購入しても、それが業務上必要なものではなく、従業員の娯楽のために個人として購入すれば、当然、消費者契約法は成り立ちます。

事業者とは「法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる個人」というようにこの法律で定められています。

☆生命保険の販売員を自宅に呼んで契約→
☆ボランティア団体との個人との介護サービス契約→
☆コンビニなどのフランチャイズ契約→×
☆マンション管理組合と管理会社との修繕・保守点検契約など→×

重要事項の不実告知

訪問販売などで、販売員から「これは痛風に効果があります」などと健康食品の販売にあたってこのような説明をされた場合、もちろん医薬品で無い限り薬事法違反にもなりますが、全く効果が現れずそういう成分も入っていないものであれば、虚偽の説明ということになります。

このように事業者が契約の重要事項について事実と異なる説明をし、消費者がこれを信用して契約をした場合、消費者はこの契約を取消すことができます。この場合は事業者側が事実を知っているかどうかは関係が無く、事実と異なることを述べてはいけないということです。

不利益事実の不告知

事業者が建売住宅を消費者に販売する時など、その時点では周りに高層建築物が無く、景観や日照条件などの良いところばかりを宣伝し、2、3年後に高層マンションが近くに立つ計画があることを知っていれば、重要な事項にかかわる不利益な事実として事前に消費者に告知しなければなりません。

このように消費者側に、事業者が確実に知り得ている重大な事実を知らせずに契約を結んだ場合、消費者は契約の取消しをすることができます。この場合に大切なことは「知っていたのにわざと説明しなかった」ということです。

断定的判断の提供

陶器や絵画などの美術品の販売の際に、業者側が「これは有名な方の作品なので将来必ず値が上がるから、今買っておいて絶対に損はない」などと言って売買契約を勧めてくる場合があります。

消費者契約法に当てはめれば、「必ず値が上がる」「絶対に損はない」などと、何の統計的資料や根拠も無く、独自の断定的判断の提供で契約を勧めることは違法になるので、契約を取消すことができます。

不退去による契約

教材の訪問販売などで、業者の販売員が何時間にも渡って熱心(しつこく)に教材のセールスをしてくる場合があります。消費者側が「必要ない」とか「お金に余裕が無い」など、理由はどんなものでも構わないのですが、それでもその販売員が居座り続け、仕方なしに契約してしまう被害が相次いでいます。

「帰ってください」とは言わないまでも、購入の意思のないことを明示しているので、こういった契約は「不退去による困惑」の結果のものとなり、契約を取消すことができます。

退去妨害による契約

都会に限らず、地方の小さな町にも悪質業者はやってきます。プレハブなどの簡易に組み立てられた、外からは一切中が見えない営業所のような所で商品の売買をします。最初は無料商品などの配布で客を誘いますが、最終的には高額の布団や鍋などを購入させるように仕向け、何も買わずに帰ろうとする客を、業者のセールスマンたちが出入り口を塞いで、何かを買うまでは帰れないようにしてしまいます。

これは催眠商法又はSF商法と呼ばれるものです。「買う気はありません」「帰させてください」などのように契約の意思の無いことを告げたり、退席するために出入り口まで行って押し返されたりすれば、消費者契約法の退去妨害ということで、売買契約を取消すことができます。

消費者契約法による取消し

消費者契約法による契約の取消しは、クーリングオフの制度とは全く異なるものです。クーリングオフの場合には契約の解除をするのに、何の理由も告げる必要はなく、一定の期日(8~20日間)の間なら自由に解約ができます。

しかし、消費者契約法による契約の取消しでは、前述した通りの理由がなければなりません。しかも、その取消事由に事業者と消費者の間に食い違いがあれば、消費者側がそれを立証(事業者側の立証責任とすれば本当に有難いのですが)しなければなりません。

したがって契約書やその他、証拠となりそうなものは必ず大切に保管をしておいて下さい。立証が難しいとお考えになっている時はご相談下さい。

取消しは口頭でもできるのですが、あまり賢い方法とは言えません。取消しの意思をはっきりと、しかも後でトラブルにならないようにするためにも、文書による解約通知が一般的であり、必要不可欠です。さらに内容証明郵便で行うと、その証拠を公に残すことで安全性が高まります。

クーリングオフの通知は文書を発送(消印の付いた時)した時点で成立しますが、それ以外の契約の取消しでは、文書が相手方に届いた時点で成立することになります。

商品を受け取っている場合、クーリングオフであれば、その商品の引渡しにおいて消費者側が負担する金銭は全くありませんが、消費者契約法による契約の取消しでは商品の返品にかかる送料等は消費者側が負担をしなければなりません。

取消期間

消費者契約法による契約の取消しの期間は、契約をした日から5年が過ぎるとできなくなります。しかし、5年もあるならと少し安心してしまいそうですが、実は「追認をすることができる時から1年間何もしなければ時効になる」という条文があります。

簡単に説明すると、訪問販売などで、業者が帰っていった時点から、または購入した商品や権利などの質や内容等が、業者の説明の事実と異なっていることが分った時点から、その日を含めて1年が過ぎれば解約できなくなるということです。

契約から5年以内であれば、諦めずに解約の手続きをする必要はあるでしょう。

契約の取消ができなくなる場合

消費者契約法による契約の取消しの期間は上記の通りですが、その期間内でも取消を主張できなくなる場合があります。

①取消できることを知っていたにもかかわらず、事業者側のサービスを受け続けた場合。契約時点での説明と違っていた(実際はネイティブの講師がいなかった等)のに英会話学校などの授業に出続けた場合など。
②事業者に債務の履行を求めた場合。契約した後に取消せることを知っていたが、その商品の引渡しや、サービスの提供を請求した場合など。
③取消できることを知りながら、契約に従った支払いを続けた場合。支払い義務の無いことを知りながら代金や会費等を払い続けた場合など。

消費者契約の条項の無効

事業者と消費者が何かの契約をする場合に、常に平等な条件で契約ができるわけではありません。一般的には事業者の方が、自分に有利になるような契約条項を掲げていることが多いものです。これは悪質業者に限らず、良心のある事業者でさえ、周辺法律を知らなかったがために独自で契約のきまりを作ってしまうということなのです。

そこで一方的に事業者側が有利にならないように、この消費者契約法という法律が作られ、契約を結ぶ上で次のような条項にあたるものがあれば無効とされることになっています。

①事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

②事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項

③消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項

④消費者契約における事業者の債務の履行に際してなされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の一部を免除する条項

⑤消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項

また上記の条項は、次のようなことに該当すればその規定は適用されません。

①消費者契約において、目的物に隠れた瑕疵があるときに、事業者が瑕疵のない物と交換する責任又はその瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

②消費者と事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約、又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、その瑕疵によりその消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物と交換する責任を負い、又はその瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

損害賠償に関する条項

契約を取消した場合や目的物に瑕疵があった場合など、損害賠償などの支払いで事業者の都合の良いようにされては消費者側はたまったものではありません。そこでこういう時にも消費者契約法による条項が適用されており次のような場合にはその契約条項が無効となります。

①消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項で、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分

②消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年14.6%の割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分

消費者契約法に当てはまらない場合

消費者契約法に当てはまらなくても、相手が悪質業者の場合には、民法や商法、または刑法などに係る事実がないか、諦めずにしっかり探ってみることが大切です。

例えば、業者の詐欺や強迫が立証できれば、取消しの時効は追認できる時(事実がわかった時)から5年、契約の時から20年もあるのです。


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